「料理人」とは?

料理人。この言葉が指すものは時に幅広く、また、ごく狭い範囲のこともあります。

私が自分のことを「料理人」と言えるようになったのは三十路を過ぎたころからです。それまで料理をしていなかったのか?というとそうではなく、レストランで朝から晩までしっかり働いていました。

料理人とは、ただ料理をしているだけでは料理人とは自称出来ない。そう思っています。それは、憧れと責任、少しの自虐が入り混じったものです。


調理師学校に通った人でも私のようにそうでない人間でも、右左も分からずレストランに就職します。そして必ずそこでシェフや先輩コックと自分の差をありありと見せられることになるのです。

包丁の切り方や皿の拭き方、接客や掃除の仕方など、とにかくあらゆることで攻撃されます。賄いは駆け出しの仕事と相場が決まっていますが、毎日採点されます。一口食べて不味いと言って捨てられることさえあります。パワハラという概念はありません(今はもしかすると大分改善されているかもしれませんが)。

私が修行したお店は、ありがたいことにそうした理不尽はありませんでしたが、仕事で求められる正確性に対する厳しさはかなりのものだったと思います。塩ふりの丁寧さや、パスタの水分調整などはかなり鍛えられたと思います。その店でしっかりとした下地を作っていただいた師匠には、感謝は尽きません。


駆け出しの人間にとっては、レストランの長たるシェフや、先輩たちが料理人像になります。彼らに技術的に追いついて初めて、自分も料理人になれる、という暗黙の理解があります。

シェフの立場を経験し、技術もそれなりについたなと感じた30歳過ぎあたりから、私も自分のことを料理人だと言えるようになりました。


レストランとその内部の人間関係などは、そこに勤めたことのある人でないとピンとこないところも多いと思います。

アンソニー・ボーデインというシェフがいました。アメリカで大成功したスターシェフだったのですが、残念ながら自らこの世を去りました。

彼の著作が私はとても大好きです。レストラン内部のドロドロした部分や、自分の力でのしあがっていく様子、営業のピークタイムの激しさを描き出しており、同業者には共感と勇気を与え、そうではない人たちにとっては衝撃的な内容です。

仕事が苦しいとき、疲れ果てた時などは、帰ってきて深夜にこの本を読むことがあります。すると何故か元気が湧いてくるんですよね。皆さんにオススメしたい本のひとつです。

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#半農半X

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