イタリアに行って仕込みの方法が変わった最たるものがトマトソースかもしれないというお話。
レストランでトマトソースが作られる場合の材料は、たとえば…
- ホールトマト、にんにく、バジル/オレガノ
- ホールトマト、香味野菜、ローリエ
- フレッシュトマト、にんにく、オレガノ
- フレッシュトマト、玉ねぎ、バジル
etc…
にんにくやハーブ類で香り付けしたり、香味野菜で味のベースを作ったりします。
私が駆け出しの頃にいたレストランでは、オーソドックスなパターンで香味野菜の人参玉ねぎセロリ(セロリは無しのパターンも)をじっくりと炒めて甘みを出し、ホールトマト、ローリエを加えて煮込み、頃合いになったらバーブレンダーで攪拌するというやり方でした。
もしかしたら最初にオリーブオイル大さじ1〜2くらいとにんにくひとかけを火にかけて香り出ししていたかもしれません。
また、バーブレンダーで攪拌するタイミングも煮込む前か後かは店ごとに違いますし、ブレンダーではなくムーランで漉してタネは捨てるというお店もありました。
さて、イタリアのお店で出会ったトマトソースですが、一つはプーリア北部フォッジャ県のペッペズッロのもの。
もう一つはそこからやや南下したターラント県パラジャネッロという町の、ラ・ストレーガというお店のものです。100席ある大きなお店で、プーリアには数少ないミシュラン一つ星を保持していました。
そしてそこのトマトソースが、まるで魔法のようなレシピだったのです。
※「ストレーガ」は「魔女」の意。
盲点、オリーブオイル
その店のトマトソースの仕込みは今までに見たものとは全く違いました。いえ、もはやトマトソースではなかったと言うべきかもしれません。
まず、直径50センチくらいの鍋に2段重なるくらいの大量のミニトマトを投入していきます。潰したにんにく1,2かけを入れ、そこにエクストラバージンオリーブオイル※をたぷたぷと流し込んでいきます。
※以下、EVオリーブオイルとする。
EVオリーブオイルの量は尋常ではなく、ミニトマトがひたひたになるくらいまで加えられていました。その鍋を弱火にかけ、ポコポコするくらいの弱火で1時間ほど煮ました。
その後、Bimby(ビンビ)というイタリアでポピュラーなミキサーでピューレにしていきます。完全に攪拌されると、ほとんど黄色に近いオレンジ色をしていました。
味見をさせてもらうと、EVオリーブオイルの油分とトマトの水分が乳化しており、素晴らしくなめらかで、豊かなこくを湛えていました。酸味は残りながらも甘みと風味のバランスが取れていて、純粋にトマトから作られたものだということを再確認できる味わいです。
それは当たり前のようですが、日本ではそうでないものも多く、酸味が完全に失われていてのっぺりした味わいのものや、逆に酸味が立ちすぎているので砂糖が加えられて不自然な甘みがあるものもさえあります。
今まではホールトマトに他の野菜の風味を加えて味を作り上げていましたが、それはトマトの味わいを薄めることになっていたと気づきました。トマトソースを作ろうとして、「トマトが入っているソース」を作っていたのです。
真に注目すべきはEVオリーブオイルの量でした。日本では「油分=良くないもの」という先入観がオイル使用量を減らしていますが、丁寧に作られた新鮮なEVオリーブオイルは最高の調味料です。この視点を得られたことはイタリアでの最大の収穫のひとつであることは間違いないと言えます。
EVオリーブオイルが酸化してくるのは200度以上の高温になった場合と、日光の当たる状況や高温の場所に長時間置かれていた場合です。ちゃんと保管されていたならば劣化の少ない油です。
トマトソースの作業段階で加熱しますが、水分と合わさっているので最高でも110度くらいまでにしかなりません。
また、ビタミンE、Kやポリフェノール、オレイン酸などを含んでおり、栄養面でも優れていますので、摂りすぎはあまり考慮する必要もないでしょう。
日本に帰ってきてから、改めてトマトソースについて考え始めました。
トマトの活き活きとした風味を生かすソースづくりです。フレッシュトマトがある時期はもちろんそちらを使用しますが、それ以外の時期にはホールトマトに頼ることになります。
ホールトマトは色々なメーカーのものを取り寄せ比較した結果、プーリア産のものに決定しました。加える野菜は炒めた玉ねぎだけにしました。しかし、のちに玉ねぎも加えるのをやめ、今ではにんにくひとかけを加えるにとどめています。
イタリアでの経験は、料理をよりシンプルにしました。しかしそれは、味を単純で質素なものにするということではありませんでした。
むしろ、より豊かな風味を追求することになりました。EVオリーブオイルの使い方を学ぶことは、私のトマトソースを洗練したものに導いてくれたのです。
こちらが実際に営業で使用しているホールトマト缶です。甘みと酸味のバランスに優れ、年間通して味のブレが少ないです。
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こちらは使いやすい小缶。オーガニック食材に強いアルチェネロのものです。
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トマトソースの仕込みに使うのは少しもったいないですが、仕上げ用におすすめのオリーブオイルはこちら。
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シチリアの名門メーカーのノンフィルターEVO。フルーティさとハーブの風味、しっかりとしたボディがありますので、前菜からメイン料理まで何にでも合わせられます。
トマトソースレシピ
2.5kgのトマト缶に対し
- にんにくスライス 1,2片分(お好みの量で)
- EVオリーブオイル 約500cc(スーパーで500m1000円くらいのものを使うのが良いかと思います。)
- 塩 大さじ1
- お好みのハーブ オレガノ/バジルなどがおすすめ
1. にんにくスライスとEVオリーブオイルを鍋に入れ、弱火にかける。じっくりと温度を上げ、にんにくを加熱していく。
2. にんにくが軽く色づいたら、ホールトマトを加える。缶の中に残ったソースなどはゴムベラでこそいで無駄なく使う。塩を加える。
※オレガノを入れるならこのタイミング。
※この時、缶に水を入れて加えると鍋内の水分が増え、温度が上がりづらくなるので避けること。温度が上がらないと煮込みの時間が伸びると共に、酸味が飛ばなくなる。
3. 中弱火の火力を基準とし、煮込んでいく。煮詰まってくると焦げついてくるので注意し、都度火力を調整する。ときどきかき混ぜながら30〜40分煮込む。
※バジルを入れるならある程度煮込んでから。黒くなったら取り出す。
4. 水位が下がり、ボコボコする気泡が粘りを持ち始めてきたら火からおろし、バーブレンダーで攪拌する。鍋の際のところにオイルが残るので、余さず乳化させる。
5. 味見をして調整する。ステンレスかホーローの容器に移し、氷水などに当ててなるべく早く冷ます。
※すぐ使う分以外はジップロックに小分けして薄くのばし冷凍すると便利です。
ぜひ試してみてください!